篠田真由美お仕事日誌

Sherlock回顧 1/忌まわしき花嫁への疑問点

 取り敢えず、自分的には70パーセントくらい否定的なS4が終わって、「つまりどこが自分的にはそんなに気に入らないんだろう」などとつらつら考えるが、結論を出すのはディスクを買って見直さないとな、と思う。S1の頭から、いろいろいってみたいこともあるのだが、それにはやはり見直さないとと思う。3まではボックスで持っているんだけど、いま仕事に入ってしまったので、その余裕がないのだよ。脳のキャパが昔より格段に減少している感じがあってさ。
 だもんで、取り敢えず見直したくてもディスクまだ買ってない、でも劇場で4回見たぜな「忌嫁」についての、引っかかりをまず書くことにする。これは、順不同に思いついたことを、取り敢えず4までのシリーズを含めた中であれこれ考える、というページにします。

 ヴィクトリア朝舞台にベンとマーティンがホームズとワトソンをやる、という企画自体かなり好き。ふたりの扮装もとても決まっていたし、でぶったマイクロフトのお遊びも不穏な感じが面白かったし、ハドソンさん、メアリ、ワトソン家のメイドといった女性陣の反撃的せりふも、お遊びの一部だなと思って楽しく見た。「シャーロック」自体がドイル正典の二次創作だけど、この特別編はそれのさらにパスティーシュみたいなものだと思ったから。
 犯人が怒れる女たちの同盟だった、という趣向を、それほど真面目に受け取る必要は無いと思うのだよね。女性に対するリスペクトというには、いかにもお粗末さんであったけれど、別にエンタメのドラマで正しいフェミニズムを勉強する必要も無いんじゃない? いやもちろん、篠田は男根主義には断固として反対しますよ。性分業的結婚観なんて、でえっきれえでありますよ。でも、シャロとジョンのブロマンスも大好きだもん。それとこれとは別腹よ。だから変にフェミニズムに目配せするようなのは、かえって失礼だとは思うけど、いちいち咎め立てるのもおとなげないな、と思います。ここで「疑問点」というのは全然別のこと。

 死んだはずのモリアーティからのネット映像という謎を、シャーロックがマインド・パレスの中で、過去にあった未解決事件を参照して解明しようとする、という趣向はすごく面白いと思う。面白すぎて、これをそっくり外郭に使用した本格ミステリを誰か書かないかななんて思ってしまったほど。そういう趣向を思いついた、という一点において、拍手します。シャーロックのいる現代にドイルのホームズ物語はなかったんじゃないの? なんて、突っ込めば突っ込めるけど、そこは喜んで目をつぶっちゃう。自分にとって、問題はその先だ。
 ジム・モリアーティはシャーロックの目の前で、ピストルを口の中で発射して自殺した。シャーロックは19世紀に起きた、衆人環視の中で口の中にピストルを発射して死んだのに、生き返って夫を殺したリコレッティの妻の事件を思い出し、この事件を解くことでモリアーティの死の真相に迫ろうとした。でも、このふたつの事件って、口の中にピストル入れて自殺、という点しか同じじゃないよね。リコレッティの妻については、現場に彼女の味方の女性たちがいて、死体をすり替える余地があった。モリアーティの自殺現場には、チーム・ラザロ他シャーロックの味方が複数いたはずで、彼が飛び降りた後でモリアーティの死体がどう処理されたのか、問題はまずそこではないですか。死体が消えたとか、動かされたとかはあったのか。その点で疑問を抱く余地はあったのか。しかも自殺の瞬間の目撃者はシャーロック自身だ。自殺が狂言なら誰より彼が気がつくはずでは。
 本気でモリアーティ生存説をなりたたせるなら、替え玉説以外あり得ないことは、最初から明白だと思うんだよね。なにもわざわざえんやらや、とヴィクトリア朝に戻らなくても。だから、モリアーティ事件の解明のためのヴィクトリア朝ダイブだったなら、事件はもう少し似た構造のものである必要があったんではないのかな。あれだけいろいろやっておいて、「リコレッティ事件は多数共犯者の援護によるもの+時間差自殺でした。モリアーティの場合はそれはあり得ないから、やつはやっぱり死んでるよね。たぶん彼が生前にしかけた罠と、残党が動き出したんだよね。じゃあ、取り敢えずは相手の出方待ちだ。ハイホー」って、かなり肩すかしじゃありませんか。自分的にはそうでした。

 それから、いま思ったんだけど、これまでの女性キャラのほとんどが、怒れる女たち同盟のメンバーになっているのに、メアリだけは継子扱い。しかもマイクロフトのエージェント。そして女性たちが正体を現した場面ではフェイドアウトしてる。というのは、つまりこれはシャーロックの認識なわけだから、彼はメアリをマイクロフトの部下だと考えていて、他の女性たちとは別に考えている、ということだと思う。
 S4のシャーロックが、メアリをジョンより有能だといって捜査に加えたりするのを、「なんでシャロはそんなにメアリが好きなんだ」と違和感を感ずる意見があるようだが、自分はやはりシャーロックのメアリへの好意は、すべてジョンゆえのものだと思ってます。ジョンにとってはもはや嬉しくないけど、そのへんがシャロにはわからない。有能なスパイとしてのメアリの能力は評価していても、彼女に友情を抱いているわけではない。権威的な兄貴のエージェントを好きにはなれないわな。でも、ジョンが選んだ人だもの。

 つまりS3E3でメアリの過去を知ったジョンの中から、メアリに対する愛はかなり水位を下げている、というのが自分の読みです。そのへんはいずれS3E3について書く時にまた触れますが、いくらジョンがアドレナリン・ジャンキーだからって、嫁が元暗殺者で嬉しいか。嬉しくないよ。メアリが悪人とはいえないというのは、ゴルゴ13が悪役じゃないというくらいの意味で、認めますが。
 しかしシャロはそれを認識しない。自分が撃たれたこともちゃんと弁護したし、ジョンは彼女を赦したんだし、あの結婚式の日からなにも変わっていないと、シャロだけが信じている。あ、なんか自分で書いてても、彼が可哀想になってきた。まあとにかく、そう考えればS4の展開には納得が行くと思う。いや、ただの深読みですけどね。
 

2017.08.01

 天気予報では今日は埼玉、雨の筈だが全然降らない。曇りなので昨日よりは少しは気温が低いが、それでもあまり気持ちがいいとはいえない天気。梅雨に雨が降らずにあじさいの花が全滅して、今頃になって梅雨の戻りのような空模様になっている。水不足としきりにいわれていたが、貯水池に少しは水が増えているのだろうか。

 冷蔵庫なし生活1日目。昨日アイスボックスに入れた2キロのロックアイスはほぼ全滅。板氷は半分くらい残っている。牛乳を買ったばかりだったので、やたら牛乳ばっかりがぶ飲みする。幸い乳糖不耐症ではないのだった。冷たい飲み物がないとやっていられない季節なので、端から溶けてしまうとしてもロックアイスは買い続けないわけにはいかないだろうな。うーむ、思わぬ出費。

 講談社で電書にしてもらう『アベラシオン』、なぜか版元に使えるデータがないというので、手元に残っていたフロッピーディスクのデータを読み出す。幸い単行本のものだけでなく、手直しをしたノベルス版のデータもあった。しかしルビが全然ついていない。イタリア語のルビがやたらつけてある話なので、頭から読み返し、気に触る文章など直しながらルビを入れる。一般的なことばには、元本でもほとんどルビがついていないので、これも増やしていくことにする。
 版元にそのまま電子化可能なデータがあるものについては、手直しはなしでといわれてしまったので、一番難物の『アベラシオン』のデータがなかったのは、自分にとって幸いなことかも知れない。おかげで最初から見直す機会ができたわけだから。しかし今年はデビュー以来のろくに本の出ない年だ。気分は超貧乏。時間だけはある。なんのこたあない。学生のときみたいなものだ(いや、あの頃は金もなかったが時間もそれほど無かったな。夜学で昼間は働いてたから)。

『PC遠隔操作事件』読書中。江ノ島の猫の首輪に犯人が記録媒体をくっつけた、というので話題になり、当初犯人視されていた人物はきっと冤罪だと思っていた。いや、だって猫好きのオタクっぽい眼鏡丸顔の兄ちゃんなんだもん。犯罪視者は見えなくて。って、我ながら甘いもいいところでありました。

2017.07.31

 昨日は別に普通に帰宅して、風呂に入ったのだが、夕飯となったらなぜか一口も食べたくないということに、忽然と気がついて、「ごめん」といってベッドに入ったら、まもなく普通に眠ってしまって5時過ぎまで熟睡してしまった。やはりとんこつラーメンは、真夏の自分には厳しかったか。

 今日は暑い。そこへさらなる試練が。仕事場の、無印良品の冷蔵庫が突然冷えなくなった。冷凍庫に入れたスーパーの氷の袋に水が溜まっていたのには気がついていたけど、ドアが空いてしまったかな、くらいにしか思わなかったんだけど、気がついたら冷蔵室も冷えてない。というわけで、あわてて電気屋に走って、同じくらいの大きさのを買ったのだが、配達日はなんと8/10だといわれて愕然。この季節に10日間も、冷蔵庫なしで暮らせというのか。それはかなりあんまり、といってもしょうがない。取り敢えず車に積んであるクーラーに氷を入れて、牛乳とか収納。冷凍食品買ってなくてよかった。

読了本『それでも猫は出かけていく』 ハルノ宵子 幻冬舎 吉本隆明の娘で吉本ばななの姉でマンガ家の著者が、両親の看取りや自身の乳がん手術の中で、自宅で同居している猫、面倒を見ている外猫たちとの生活を、練達のイラストと文章で綴ったイラストエッセイ。中でも幼少時に尾の根元の神経を損傷したために尿意のコントロールができない障害猫を手元に引き取って、その世話をしながら同居する話が中心になる。
 また、外猫にえさをやるとノラが増えてしまうというアンチ猫派には、外猫の生存率、特に赤子のそれが極めて低いことから、雌猫の避妊手術を徹底すれば決してノラは増えない、と冷静に主張。自分がえさを与えている猫が近所で糞をすれば、とっとと掃除に行く。また、家猫と外猫は区別して、外猫にはえさと暖房マット付き猫箱を用意するが、それ以上はかまわない、というクールな基準をもうけているあたりも、猫にすべてを捧げて生活を崩壊させるような悲惨な例も聞くだけに、なかなか感心してしまった。

2017.07.30

 昨日は飯能に新しくできた、クラフトビールとアラビア料理の店、というのに行ってきた。客席数も多い大きな店らしく、商売的に大丈夫なんだろうかと思ってしまったが、土曜だからか、できたばかりだからか、雨にもかかわらず窓際のいい席はほぼ埋まっているくらい客が入っていて、タジンで煮た羊のシチューとかも、なかなか美味しかった。でも、値段は全般にかなり高かった。

 天気予報が外れて、雨は一晩中降っていたらしく、朝になってもまだ雨だったけど出かけた。まずは沼袋から徒歩8分のラーメン屋「無鉄砲」でとんこつラーメンを食べる。コラーゲンたんまりの濃厚スープ。なんか店全体が脂ぎってるような感じ。でも、たまにはこういうのも美味いね。
 そこから西武線で上井草まで行って、歩いて桃井の「西荻モンガ堂」という本屋に行くも、水曜定休12時からと店にも書かれているのに、閉まっている。ここから西荻古本屋巡りで、「花鳥風月」「音羽館」「にわとり文庫」「盛林堂」と回る。結局買ったもののほとんどは盛林堂の100円箱。パトリシア・マキリップのファンタジーや未読の山風など。それから店内で辻真先先生のソノラマ文庫800円。その後古本バル「月よみ堂」でハートランドの生ビールを飲んで帰ってきた。

 もういい加減Sherlockのことは考えるの止めようかな、と思うのだが、どうしても頭にひっかかるのは、「いつものアレ」しか認めないというのは、受け手の怠慢という可能性もあるんじゃないか、なんて考えてしまうからだと思う。サザエさんのように、水戸黄門のように、毎度おなじみ以外は嫌、というのはどうなんだろうと。
 でもこれはなかなか考えても難しい話なので、もう少し問題を絞り込んで、「メアリというキャラクター」について考えてみたらどうだろう。アンチ・メアリ派はかなり手厳しいものだが、自分は実を言うとそこまでメアリに否定的ではない。というか、3−1で登場したメアリはとてもキュートで魅力的に思えたし、決裂しかけた男ふたりをうまく仲直りさせてくれそうだった。ジョンが結婚するなら、こういう女性でいいんじゃないと本気で思ったんだけどさ。
 でもこの後、話はどんどん混迷を深めていく、としか思えません。困ったことにシーズン3はメアリに関する伏線がかなりはじめから張られていて、メアリを否定しようとすると頭から否定しなくちゃならなくなる。そうでなければ、「ここの分かれ目がいかん」と指摘したいところだが、決定的な一点が見つからないんだよね。


2017.07.29

 昨日の晩餐はミニトマトのカプレーゼ、ゴーヤのフリッター、バジルのスパゲッティ。トマト、ゴーヤ、バジルは自家製という、なかなかに充実した献立だった。
 今日は朝から真っ暗で、気温は低めだが湿度が高い。あまり快適とはいえない。そんなことばっかりいっていても、仕方が無いんだけどね。ジムで汗を流して帰宅。洗濯。

 今年の五月に出たノンフィクションの本を買おうと思って、ネットで調べたらアマゾンで3週間、hontoでは1〜3日とあったので後者で頼んだところキャンセルにされる。hontoはつい最近も同様のことがあったので、ここは出たばかりの本以外は当てにならないらしいと改めて痛感する。そしてアマゾンからは「予定より早く入荷しましたので、明日か明後日にはお届けします」というメールが来る。別に当日に配達される必要は無いけど、サイト上の記載事項が当てにならないというのは困る。それを基準にして注文しているわけだから。

 八月にやる予定の仕事はあるのだが、この三ヶ月ばかり、ずっと進みの良くない原稿にかまけていて、あれやこれやと行きたいところやりたいことを放置してきたので、暑さや湿度にめげてないで、保留していたやりたいことを、どんどん片付けるつもり。手始めに、明日は日曜だけど、西荻の古本屋巡りをする。で、その前にコラーゲンたっぷりの濃厚なラーメンでスタミナをつける。がんばれ自分。

2017.07.28

 新潮社刊行のアミの会アンソロジー「迷 まよう」「惑 まどう」刊行記念イベント、無事完了。お客様にはお楽しみいただけたようでなにより。ゲストの男性三人、大沢在昌、今野敏、法月綸太郎 という豪華メンバーで、これが大変に面白かった。大沢さんって、ほんとトークが上手いのね。FBで、アミの会を検索してもらうと、公式サイトが出ます。近々イベントの映像などもアップする予定なので、ご興味がおありの方はぜひご覧ください。

 角川ホラー用の新作は脱稿したけど、出るのはずーっと先になると思う。今日は洗濯して、栽培したバジルでジェノベーゼのペーストを作って、後は虚脱。だらだら。今日も曇りだけど、昨日よりは気温が高い。

 イギリスの友人からのメールで、もしもSherlockのS5が作られるとしても、ずっと先になるだろうね、と書かれていたので、それはきっとそうだろうけど、そのときは思い切って4までのことは切り捨てて、俳優は同じだけど、新しいドラマを作るくらいの感じでやってもらうしかないだろうな、と考える。ベン、老けたし。あのクルクルヘアはもう似合わないから、もう少し渋くてアダルトなホームズ像を再創造してもらうしかないんじゃないか。だけど、それを見て自分がどう感じるかというのは、ちょっと別の話かも知れないなあ。渋い中年のシャーロック・ホームズが、けったいな事件の依頼に「クリスマスだ」って踊ったりしたら、それはかなり引くっしょ。とんがった変人ではない、人格温厚な熟年になりました、という顔をしていて、でも根深く変で可愛い、でないとね。

読了本『回想のビュイック8』 S.キング 新潮文庫 これは激しく変な、なのに一方ではノスタルジックな、ホラーではないが、SFのようでいてSFともいいかねる、実にもうキングしか書けないでしょ、といいたくなる長編小説。
 田舎の警察署の倉庫には往年の名車ビュイックが一台ひっそりとしまわれている。署員はみんなその存在をしっているが、それについて語ることは一切無い。ところが、勤務中交通事故に遭って殉職した警察官の息子が、父の死から立ち直れないまま警察署にやってきて、署員たちに可愛がられる内、その車の存在に気づく。実は死んだ彼の父も、この車に強く惹きつけられていた。ここは彼に語るべきだと心に決めた分署長は、彼の前任が「いっさい記録に残さず、署員の他に語らない」と決めたのを破り、奇怪な車の来歴を語り出す。ビュイックの形をしていながら車ですらないもの、しばしば光を発し、生き物や人を飲み込み、異生物を吐き出す生き物か機械仕掛けかもわからないシロモノについて・・・
 いや、面白い。けどまあ、一度読めばいい。

『月影の迷路』 リズ・ベリー 国書刊行会 1994年に書かれた長編ファンタジー。イングランド、サマセット州にある田舎の小さな村と、貴族の館と庭園、謎めいた中国庭園、忘れられたストーン・サークル。その地に隠された秘密の遺産と、相続人をめぐる葛藤。伝統の重荷から逃亡した母と、なにも知らされていない娘が、病床にある当主のもとに帰ってくる。不和とすれ違いから相続人を失い、破壊されようとする美しい土地を、若者たちは守ることができるのだろうか・・・
 というわけで、既視感のあるストーリーに、これでもかという魅力的なディテール。ところがヒロインを初めとして、登場人物たちには一向に生彩がなく、物語はろくな葛藤もないまま、無知だった娘が事情を知り、ボーイフレンドの感化で目指していたキャリアウーマンの目標を投げ捨て、超能力者の遺産相続人としての自らを見いだしていくという、直線路まっしぐらで始まって終わる。材料がもったいないな、という感じ。

2017.07.26

 朝からの土砂降りの雨は「長く続かない」と天気予報がいっていたけど、まだずっと小雨が降っている。でも湿度がめちゃめちゃ高くて、室内の体感温度は不快のまんまなので、とうとうエアコンをつけた。

 シャーロックのS4E3の感想を別途書きました。1があんまりひどかったので、2と3はそれよりまし、と思いながら吹き替えの放映を見た。吹き替えだとわりとするっと普通に見ちゃう、というのはある。だけどいざ感想を書こうとすると、あちこちひっかかるところが出てきて、誉めるよりは文句を言う方が先になってしまい、だんだん自分でもうんざりしてきた。ミステリとして穴があるというのは、最初からなんだけどね、ヤク中とか、サイコキラーとか、好きじゃないものが多すぎてそれも神経に障った。好きじゃなくてもドラマにそれが出る必然性があればまだしもだけど、そんな気がしなかった。
 物書きとしての感想だけど、作り手はやはり長くやっていると、前と同じことはやりたくない、という気持ちが強くなると思う。自己模倣は堕落だと。だから違ったことをやりたくなる。円環的ホームズ物語を成長という直線的物語に読み替えるとか、創作者の野心でしょ。だけど実は受け手は、そんなの望んでなかったりする。「いつものアレ」が見たい。水戸黄門や大岡越前が見たい。ホームズの正典も、バラエティはありつつも、221Bに依頼人がやってくる、ホームズとワトソンが迎える、ホームズは依頼人をサーチする、「いつものアレ」が読者を喜ばせていて、ホームズの死による消滅という直線物語は読者に全力で拒否されたわけだよ。
 ひとつにはネット時代の悪弊で、視聴者の感想がリアルタイムに届いてしまって、それの裏を掻こう的な意識が制作者に強く出たのも、まずい結果を生んだ一因だと思う。作り手が偉いんだからガタガタ言うな、ということなら、あんまりお客の反応に気を回さない方がいいと思うよ。それと、シャーロックはなんといっても原作ありきの二次創作なんだから、原作に対するリスペクトを喪失するのは一番上手くない。
 そしてリスペクトというのは、決して原作ネタをちらつかせて原作ファンのご機嫌を伺うことではありません。そのへんをどこかから取り違えたように思えます。

 明日は新潮社から出るアミの会アンソロのイベントなので、日記の更新は1日お休みです。

Sherlock S4E3/感想

終わった終わった。祭りの後感強烈なラストだった。ばたばたと畳みまくってくれたものよ、というか。レストレードのgood man 発言とか、後で使おう的なフックはいくつか用意されていたんだろうけどね、シリーズ全体の構想があったなんて聞いても信じないよ。あれくらい、後付けでいくらでもつけられるもん。自分が建築探偵畳んだ時の経験から申しますけどね、ある程度やってればそんな伏線紛いのなにかなんていくらも拾えるものなの。別にいいけど、S3E3の帰ってきたモリアーティはなんだったのだ。シャーロックがマインドパレスを過去までさかのぼっちゃった案件まで、見事に腰砕けのすっとぼけだもんね。
面白かったといって誉めた点を後でちゃぶ台返し。ライヘン・トリックの肩すかしとか、真面目に考えた方が馬鹿みたいじゃんって、何度もそういうことやるのは、洒落を通り越してつまんないと思う。どんでん返しってすごく毒がある手法なわけよ。物語の真実性を犠牲にして驚いてもらうわけだから、やりすぎれば麻痺するだけ。真面目に視聴者やっちゃいられんよ、とね。ま、ユーロスが録画を流しました。それだけですってことなんだろうけど。フェイスに化けたユーロスが残していったメモに、Miss Me? って書いてあったからそれが答えってことなのでしょう。なんかどうでもいい。

取り敢えずE2までのことは水に流した、のでしょう。のですよね。探偵のばっちい無精髭もめでたく消えたことだし、ジョンも普通に221bにいる。お兄ちゃんの傘の仕込み剣もピストルもばっちり出して拍手? ホラー映画ごっこは内輪受けっぽくて、自分はあんまり好きではないけど、楽しめる人もいるでしょう。
そこから一昔前の戦争物かスパイものか、はたまた天知茂の明智小五郎の変装か。三人組はシェリンフォード監獄へ潜入。といっても、あれ? このときまだ監獄がユーロスに掌握されていると考えてなかったら、潜入する必要ないじゃない。マイクロフトはえらいさんなんだから、堂々と表玄関から行けばいいだけだよ。ユーロス掌握の可能性を考えているなら、なおさら小人数の突入は危険すぎるだろ。それに、そう考えていたとしたら三人とも無防備すぎるだろ、とまあ、いきなり突っ込みどころが多いこと多いこと。
そしてユーロスの仕掛けるゲームはゲームになってません。ジムのゲームが怖かったのは、向こうがルールを守っていたから。正解すれば人質は助けるなら、正解できなかったら人質は殺される、こちらのせいで殺されるということになる。だから必死にならざるを得ない。ところがユーロスはやりたい放題。どっちにしても殺されるのに、真面目に付き合うやつがいるかい。なんでこの人たちは唯々諾々ということ聞いてるわけ? と思うとのれない。
おまけに出てくるのは、推理どころかただの無理難題。モリーに「愛してる」といわせろ、なんて、女の子のいじめの発想だ。そこがユーロスらしいといいたいのかもしれないが、そんなの天才でも何でも無い。ただのたがの外れた人殺し。女優さんはその、たがの外れた感を好演してるけど、見ていて面白いとは思えない。サイコホラーは嫌いなんでね、好みの問題だけど。
飛行機でただひとり目覚めた少女が助けを求める、というのはなかなかいいシチュエーションだと思うんだけど、こっちのドタバタした妙な殺人ゲームのおかげで、注意が二分されてしまって、そちらでハラハラとはいかない。そのあげくは「架空でした」といわれて、またまた肩すかしを食わされる。そりゃまあ現代のヨーロッパの空で、旅客機が何時間も無線を切ったまま漂流しているなんてあり得ないんで、そこからおかしいと推理できるでしょ。それくらいなぜ気がつかないシャーロック。ユーロスにマインドコントロールされてるのか。
ラストのシャーロック失神から解決に至る展開は、誉めていえば「畳みかけるような」だけど、実は「疑問を挟まれると崩壊するから、とにかくバタバタと」じゃないの。墓石の暗号は納得してる暇が無い。あの水の勢いじゃ、間違いなくジョンは溺れ死んでる。おまけにロープを投げられても、鎖で繋がれてるんじゃ助からない。まあ、その前に水は止めたんだろうけど。毛布は完全にS1E1の再現だろうけど、レストレードの発言もそうだろうけど、なんかもうどうでもいいや。
なるほど、シャーロックはどんどん普通の人になる。ついには普通から通り越して、聖母のような人になる。ジョンかマイクロフトを殺せとまでいわれた相手を、血の繋がった妹だからって抱きしめる。無理無理無理。無理すぎる。そしてマイクロフトも失墜。弱さをさらしたあげく、母親にまで罵倒される。ユーロスをああいう形で救うなら、彼女はあそこまでの大量殺人者にするべきじゃない。旅客機の少女の救出というネタだけでシャーロックを翻弄して、その実救われたいのはユーロス自身だった、という落ちにすればまだしもだったのに、見えてる範囲でも所長と妻、三人ガリデブ、少なくとも5人は殺してる。それでいいのかね。
最後の畳みはね、おしまいですよ〜としか見えなかった。ああ、老けたね、ベン。

あれこれいうのも愛ゆえ、というところも、通り過ぎてしまった気がします。気を取り直して、S4を通して「いいところ」を上げてみようかと思ったけど、同じ愚痴を繰り返す羽目になりそうなので止めて、取り敢えず今回はこれで終わります。S1に戻って分析、というのもいずれやりたいけど。ピンクとかね、ミステリ読みからすると突っ込みどころは実は色々ある。でもま、それもいずれ。

2017.07.24

 昨日は新メニューのゴーヤ・カレー。といっても、ゴーヤを煮込むのはあんまり好きではないので、オイルで炒めた厚切りのスライスをトッピングしただけ。カレーはタマネギ、生姜、ニンニク、ピーマン、人参をフードプロセッサでみじん切りにして、豚バラスライスにカレー粉を入れてもみもみ。火にかけて、皮を剥いたトマトと、水気にプレーンヨーグルトを少し入れて、肉に火が通ったらおしまい。これを、くしゃみしたら飛ぶような軽いインディカ米のご飯にかけた。すばらしい!

 朝起きたら暗くて、ところが湿度が高いだけで全然涼しくない。むしむし度MAX。とても耐えられないので、プリントアウトした原稿を手に図書館へ。ずーっと曇りのままで、3時くらいになったら来た来た「大気の状態が不安定」というやつが。雷激しく、雨もかなり。それも30分ぐらいは続いたんで、いくらなんでも涼しくなったでしょう、と雨が止んだところで帰り支度して出てみたら、まだ少しは降っていたけど、全然涼しくないっ。なにこれ、ここはどこ、ムンバイなの、バンコックなのってなわけで、ああもう本当に日本の気候は変になっちゃったんだねえ。変色したまま枯れていくあじさいが悲しい。

読了本『憂国のモリアーティ』1〜3 ジャンプコミックス マンガのホームズものというのは、小説のパスティーシュよりさらにいろいろ変わったことをしている。小説でもモリアーティ主人公というのはいくつもある。古書価格が高すぎて読めないのもあるけどね。でもこのマンガはちょっと変わっていて、イギリス19世紀の階級社会に怒りを覚える天才モリアーティ青年が、いわば革命の前段階として諮問犯罪者をやるという基本設定。2巻からはホームズが出てきて、貴族的なモリアーティに対してこちらはやさぐれたプー男。しかし後から出てくるワトソンは天使系で、いかにもだけどなかなかバランスがいい。軽く原作ネタも考慮というか、書き換えの素材にしている。
 ただ、主人公立場のモリアーティが、貴族の悪行を晒す、あるいは阻止するという話なので、やたらめったら変態や差別主義者の貴族が続出する。階級社会の悪をわかりやすくお話にするための方便ではあるにしても、そのへんの単純化は話を浅くするので、今後はもう少し考慮して欲しい。しかし3巻のラストでいよいよマイクロフト・ホームズが登場したので、きっと話が盛り上がるだろうなと期待大です。

2017.07.24

 鯖ペーストは非常に美味しかった。白ワインではなく、茨城に行ったときに買ったネスト・ビールのアルコール分8パーセントという強いビールを合わせたんだけど、これが実に良くあった。

 昨日はSherlockのS4E3を録画しておいたのを視聴。これもE2同様、覚悟していたよりはひどくない。いろいろと面白いところがあるし、セリフとか映像とかもかっこよかったりする。その辺の感想はまたまとめて別にアップするつもり。だけどユーロス、あれって『羊たちの沈黙』よりも森博嗣の『すへべてはFになる』じゃないかい、と思うんだけど誰も言わないね。幼い時殺人事件を引き起こして、島の収容施設に長らく閉じ込められている天才少女という設定が、もろにかぶるんだけど、この小説は英語に翻訳されてないのかな。
 似てるからパクリかとか言いたいわけじゃなくて、『F』のヒロイン、真賀田四季はちゃんと危ない天才に見える。ユーロスはただのねじの外れた殺人者だ。彼女の天才性は具体性を欠いてる。おまけにモリアーティをあんなふうに使うのはねえ。そういやあS3E3のクリフハンガー、Miss me? もユーロスがやったってことになるの。なにも説明はなかったけど。
 うまくラストが畳まれた、最初に呼応したっていうんで、「制作者は最初からある程度の流れは考えていたはずだ」という人がいるけど、私はそんなの信じません。あの程度なら後からのこじつけで十分だもん。ヤク中偽装とか病院で襲われるとか、似たエピソードが繰り返されるのも計画だ、なんていわれても全然納得しません。繰り返すことがプラスの効果になっているかどうかが問題なんで、ちっともプラスになってないと思うから。あーやっぱり自分は、肯定的深読みは出来ない人間なんだわ。

読了本『シャーロック・ホームズの事件録 芸術家の血』 ボニー・マクバード ハーパーブックス 微妙に「腐」が香るパスティーシュ。設定は原典準拠、キャラの外見描写も基本原典準拠だが、シャロとマイクロフトの微妙な緊張関係とか、BBC版を想起させる書き方になっている。『絹の家』と比べるとプロットはかなり甘い。どちらもヴィクトリア朝の児童虐待がモチーフのひとつになっているが、こちらは凄惨な描写はなく軽めになっている。
 『絹の家』を読んだ時、そのミステリ的な練りと、ばらばらのエピソードがうまくひとつに収斂していくプロットには感心させられたけど、「あんまりホームズっぽくないんだよなあ」とも思ってしまった。原典はこれほどきちきちしたミステリではないし、社会状況の暗部を容赦なく暴いたりもしない。現代の創作としてそっちに力点が置かれるのは無理もないけど、少なくともホームズ物語にはあんまり似合わない感があった。つまりホームズはどこまでも、ユーモアのある楽しい冒険物語であってほしい。そんな点ではこちらはOKかなと。

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