篠田真由美お仕事日誌

Sherlock回顧 6/S3E3のクライマックス再考

深読みは意味ないか、とか思ったのに、まだこんなこと書いてる。呪いが解けんのだ。

 前々回の記事で、シャロがマグヌッセンを撃ったことが「名探偵の死」だと断定してしまった。しかしこのシーンを再度見直すと、もう少し考えてみるべき要素があるかなという気がしてきた。シャーロックはメアリに、マグヌッセンから君の書類を取り戻してやるといった。そのときすでに、ある程度のプランは出来上がっていただろう。
 マイクロフトのノート・パソコンを取引の材料に使う。パスワードを餌にメアリの書類を手に入れ、そこにGPSで後を追ってきたマイクロフトが現れて、マグヌッセンは御用になる。結果的にシャロたちは無罪となる。というか、マイクロフトは弟の計画を見抜いていて、これに乗った。これ見よがしに必要も無いノートパソコンを家に持ち出し、パンチに酔って口を滑らせ弟思いの本音を吐いてみせた、つまりパンチに仕掛けがあるのはわかっているが、それに乗るよ、ということだ。
 ところがこのプランは、完全にマグヌッセンに読まれていた。しかも、そこには奪うべき証拠書類はない、あるのはマグヌッセンの記憶だけという予想外の事実。そして自分がしたことの結果、シャロ・ジョンは逮捕され、それは報道され、もしかするとマイクロフトも失脚するかも知れない。となると、ことここにいたってしまって、マグヌッセンを射殺する以外のどんな方法で彼を止められたかというと、どうも思いつかないのだ。非在のアップルドアに?然としたのは演技ではないだろうから、彼の思惑は本当に外れたのだ。眼鏡をウェアラブル端末と推理したのが外れたのに続いて、二度目の失敗。しかも今度は兄まで巻き込んでの致命傷だ。
 マグヌッセンを射殺することは名探偵の死だ。だがシャロはあのとき、死を覚悟していたのだと思う。彼の悲壮な表情、それを内側から突き破るような壮絶な顔、そして「英雄じゃない、ソシオパスだ。メリー・クリスマス!」という叫び。かつてソシオパスを自認する自分の、楽しい歓声であった「メリー・クリスマス!」。だがいまそこに喜びの色はない。しかし、彼はそれを選ぶしかなかった。相手は自分が殺されるはずがないと思っている。その予想を覆して状況を一変させるのは、マグヌッセン殺害以外には無い。
 ここのシーンを、メアリを救うためにすべてを捨てたシャーロック、と読むのは十分ではないのではなかろうか。彼は探偵としてのアイデンティティを投げ捨てても、マグヌッセンを殺害した。いわば相撃ちに持ち込んだ。それは「敗北」であると同時に「勝利」でもある。 少なくともマグヌッセンの予想を超えたという意味では、ぎりぎりの勝ち。マグヌッセンはどんな場合でも、自分の命を捨てることなど考えなかったろうから。そして敵を無力化できたという意味でも。しかし、そうして守った親友とその妻、兄、と彼はもはや共にはいられない。「勝利」と同時に彼は、これまで持っていたすべてを失った。あのときのシャロの表情は、喪失の大きさを改めて噛みしめているように見える。
 マグヌッセン殺害の切実な動機はメアリにこそある、と書いたけれど、シャーロックにもそれはあった。それを思いついたからシナリオは、メアリではなくシャーロックにマグヌッセンを撃たせたのではないか。敢えて殺人者であることを引き受ける、破れつつ勝利する探偵。これこそヒーローだと。
 今回このエピソードを再見して、やはり面白いと思った。メアリの正体のあんまりな意外性とか、撃たれて瀕死の重傷を負わされたのに「命の恩人だ」というシャロの強引すぎる論理とか、よく考えるとひっかかるところはありすぎるほどあるのだが、見ていると、その意外性が快くて、説得されてしまう。ジョンがメアリを赦すシーンは、ちゃんと感動的な場面に見える。なんというか、困ったことに。そして、メアリが自らマグヌッセンの息の根を止めに行くという自分の考えた代替案よりも、やはり主人公シャロが敢えて手を汚すクライマックスの方がかっこいい、と制作者は思ったんだろうな、と。
 ただ、それならメアリの設定をもうちょい変えて、彼女を不幸な過去から逃れて幸せになりたかった、悲しいヒロインにすれば良かったんじゃないかと思うんだけど。それでも夫に知られたくない過去、恐喝に遭うくらいの過去は考えられるだろう。未成年のときに過失で人を殺してしまったとか。ジョンはアドレナリンジャンキーなので、危険な女に惚れましたという倒錯的ロジックは確かに面白いんだけどね。

 それと、空港でのシャロとジョンの別れのシーン。ここはやはりいい。泣かせる。あの気まずさと照れくささの入り交じったふたり。握手と別れの言葉。そしてジョン自身の「ゲームは終わった」という言葉も。半年したら帰ってくるただの任務だと思ってたら、「おい、止せよ。縁起でも無い。これっきりってわけじゃないし」とか、ジョンが言わないわけがない。そしてたぶんもう会えないと覚悟していればこそ、「メアリを守ってくれて有り難う」なんて、いえない。一番いいたいことを口に出せないから気まずいんだ。「シャーロックは女の子の名前」で笑うジョンを見る彼の顔! 嬉しそうな、でも泣きそうな顔。あのふたりの表情に比べたら、S4E2のハグなんてぺっぺっです。暴言だな。
 だけどこの感動は、モリアーティ再来と飛行機のひっ返しで帳消しにされてしまう。ジョンは明らかにシャーロックの生還を喜んでいる。それも彼の旅立ちの不吉さをジョンがわかっていた証拠だと思う。しかしS4E2でジョンはレストレードに、シャーロックがヤクでおかしくなっていることの実例としてマグヌッセン射殺を上げている。これはかなりどうかと思う。その後メアリが死んでしまったので、メアリを守るための発砲ということの意味が薄れてしまったとジョンが思っている、また自分の暴行のいいわけをしたくてそんなことをいっている。どっちにしろあんまりいいことではないね。

2017.08.17

 実に久しぶりに、傘を持たず、しかもノースリーブで外に出られた。登山道はしっかり濡れて、道の両端はキノコがたくさん。図鑑を持っていかなかったので、多分だが「キノボリイグチ」と「コタマゴテングダケ」かなあ、と思うのがあった。いずれも毒キノコです。というか、キノコってもともと食べられないものが基本だと思う。人間の消化器では消化できないものがとても多い。特に天然のものは、食用といわれるものでも人によって当たるので、要注意だ。でも、食べなくてもキノコというのは見て面白い。だから自分は食い気抜きで楽しみます。山野草と同じで、見ることを目的にすればいいのだ。

 熱夏のさなかに冷蔵庫が壊れて、10日も待たされてやっときたのが、15日の朝フリーザーを開けたら、なぜか2キロのロックアイスがビニール袋の中で水に変わっていて、あわてて温度調節を中から高にしたけど、なかなか温度が下がらない。不良品だ、というので販売店に電話したら盆休みのさなかでメーカーも連絡が取れないという話になり、今日の午後担当者が見に来るというのだけど、どうなるやら。温度は徐々に下がっては来た。しかし説明書にフリーザーはマイナス18度と表示してあるのに、マイナス15度になるのに三日かかった、というのは、どうもなああ。

読了本『魔群の通過 天狗党叙事詩』 山田風太郎 文春文庫 山風はやはり人間残酷物語には容赦ないなあ、といまさらのように痛感。幕末の日本史に活躍した水戸人は少なからぬのに、なぜか明治政府の一員として生き残り名を残した者はいない。それは人物と言われうる人間が、すべて互いに争い殺し合って人材が払底した結果である、という、なんとも恐ろしい話。水戸天狗党という名前は聞き覚えがあったけど、実態は知らなかったなあ。

Sherlock回顧 5/深読みの行方

 昨日はとうとうSherlockの見直しを始めてしまって、といっても頭から見るのは大変なので、取り敢えず気になるS3の1を、オリジナル音声字幕抜きで見て、それからコメンタリを流し、E3もコメンタリだけ見た。そんなことをしていたら、夕方になってしまい、日記を書こうとしたら講談社から仕事関係のメールが来て、やったりとったりで時間が無くなってしまった。
 E1はやっぱり面白くて、ライヘン・トリックについても、そんなめざましい解決策があるはずがないし、そうしたらファンの熱狂を取り込んで茶化して済ませるというのも、これまでおなじみのはぐらかし技法だし、シャーロックが爆弾のことでジョンを騙して「赦す」といわせる場面も、最初はひどいと思ったけど、まあこういうものかという気もしてきた。映像はきれいだし、役者の演技はみんな良かった。
 コメンタリを聞いて思ったのだが、視聴者の深読みは完全に制作者を無視して突っ走っている気がした。自分も含めてだけど。制作者は「魅力的なメアリ」「視聴者にも受け入れられる」「でも不穏な伏線」「さあ驚いた?」と、それ以上のことは意図していないらしい。もちろんこれが本当かどうかはわからないが。E3のクライマックスも、「マイクロフトは、もうシャーロックがマグヌッセンのことを諦めたと思っていた」「パンチのせいで本音が出た」といっていたので驚いた。あのこれ見よがしのノートパソコンが、シャーロックへのサイン(おまえの計画に乗ってやるから上手くやれ)でなかったとしたら、マイクロフトはただの馬鹿だということになってしまう。つまりコメンタリも信用できない? 困ったもんだ。

 この記事の5はマグヌッセン殺害にいたるシャーロックの心理なんかについて書こうと思っていたのだが、こうなってくると、ああだこうだいわずに、素直にドラマの表層を眺めて面白がっているのが正解なのか、という気もしてきてしまう。
 でも、そう思ったからすごく納得したというわけではなく、自分のシャーロックを求めて穴を掘り続けたけど、結局なにも出てきませんでした、そこにはなにも埋まっていません、あなたの思い込みだけですといわれたようで、ふっと心が冷めて夢から目覚めたような気分といいますか。もういいわ、と。

 悲しい話だけど、自分にとってのSherlockはそういう形で終わってしまうのかもしれない。

2017.08.15

 敗戦記念日。朝から雨。梅雨の戻りとでもいうしかない。

 買ったばかりの冷蔵庫が変。ツレは安物買いだと責める。AQUAもいまは中国製。といっても、国産のブランドでも組み立てはよその国じゃんか。
 盆休みでメーカーが対応できないという。最悪のタイミング。頭痛い〜


 『アベラシオン』の電子版用データを送稿する。文章を全面的にチェックして、ルビを増やして、単行本のあとがきとノベルスのあとがきをつけた。解説もそのまま入る予定。固有名詞の注をつけようかと思ったが、あまりにも膨大なので断念。

読了本『乱歩邸土蔵伝奇』 川田武 光文社文庫 盛林堂の100円箱で見つけた。残念ながらへぼい小説だった。信長と龍馬と乱歩が繋がる、そのキーワードは明智、というのは奇想といえばいえるが、乱歩が現実の江戸川乱歩ではなく「江戸賀乱歩」となって、いくつか固有名詞やなにかに虚構がほどこされているので、龍馬が明智の末裔だったという話も、本当なのかフィクションなのかわからない。本当だったらこの三題噺も、それなりに面白くなってくるのだが、虚構ならどーでもいいやね、という感じになってしまう。
 タイムスリップを持ち出せば、なんだってできるから、安易な感じしかしない。江戸川ならぬ江戸賀というのも、つっこまれる前の言い訳という感じで、安易さを強くする。現代パートの部分の魅力のなさも、そのへぼ感を強めていると思う。

 西荻盛林堂の100円箱は、本の状態がとてもきれいだし、この本の隣に辻真先先生の乱歩が出てくるミステリを挿してあったり、すごく手入れがいいという気がするんだけど、入っている本が読んでみると「あれ?」という感じがするものが多い。いま一緒に買った山田風太郎を読んでるんだけど、これも山風にしてはいまいち感あり。

Sherlock回顧 4/ふたつの銃撃

 BBCシャーロックは、ジョンの殺人運転手銃撃で幕を開けた。実は自分はこのシーンについて、少々の違和感を抱き続けている。正当防衛というより過剰防衛、という印象が拭えないからだ。シャロもそれを承知しているから、ジョンとの会話に微妙なためらいのようなものを漂わせている。ただ、このときのジョンは兵士だった。そこは彼の戦場だった。戦闘中の行為と考えるなら、ジョンの行動は正当化されうる。そこへの布石はマイクロフトの「君は戦場が恋しいんだ」「シャーロックと行動すれば君はロンドンに戦場を見ることになる」というせりふが明らかに指し示している。だから少なくともドラマを見ている最中は、違和感は頭に浮かばなかった。ジョン、かっこいい、としか思わなかった。
 だが、ジョンのこの行為を断罪せずに済むドラマ的な布石は、他にもある。瀕死の運転手をシャロがすさまじい顔で痛めつけるシーンがそれだ。冷静になってみると、「いや、ちょっとやりすぎでは」という気がするけれど、これもまた見ている時は、圧倒的なスピードと緊迫感に浸されているので、異議を唱える隙が無い。そして、そういうひどい場面の後なので、毛布を着たシャロとレストレード、シャロとジョンの会話がほっとするような、緊張の弛緩する心地よいギャグ・シーンに見えてしまう。よく考えたらたったいま、ふたりはひとりの男を協力して殺したところだというのに。

 シーズン3のラストにおけるシャロのマグヌッセン射殺が、ジョンの銃撃と一種の対となっている、というのは、ある程度制作者も意識的なことだったのではと思う。つまりいつの日か、シャロもまた銃を取って敵を射殺する機会が訪れてしまう、というくらいの構想はあったのではないかと想像する。しかし、シーズン3のメアリを巡るドラマの不自然さ、意外性に淫したあまり主要キャラの性格がゆがんでしまう弊害を巻き起こした、理由のひとつはその点にもあったのではないかという気がする。つまりどういうシーンでシャロに銃を撃たせるかと考えたときに、前の記事で書いたように、騎士道精神でメアリを守るシャーロックが、自ら銃を取ってマグヌッセンを射殺する、という構想が浮上したのではないかという想像だ。
 名探偵が知力で敵を下すのではなく、銃殺という究極の暴力を選んだことへの違和感は、ジョンの銃撃より遙かに強かった。自分の周囲でも「名探偵ホームズじゃなくなったね」といった感想を複数聞いたものだ。マグヌッセンは確かにシリーズ屈指のいやらしいキャラで、見ていれば「この野郎ぶち殺してやりたい」という衝動を喚起する力が大変に強かった。しかし敵はモリアーティ以上に、力での攻撃はしてこないタイプであり、殴りでもしたら今度はそれを脅迫の材料に使うくらいのことはするだろう。戦うに難しい相手だからこそ、やっかいなんである。正典でも、恐喝王ミルヴァートンをホームズは打ち破ってはいない。彼は恐喝されていたレディに射殺されて終わる。そしてこれは実はホームズが射殺したのであり、ワトソンはそれを隠していたという説もある。だがやはり名探偵は、知力で敵を打ち負かしてこそだろう。

「今回は英雄になり損ねましたね、ホームズさん」「ぼくはヒーローじゃない。高機能ソシオパスだ。メリー・クリスマス!」そう叫んでシャーロックはマグヌッセンを射殺する。不可解な犯罪に飛び上がって「クリスマスだ」と無邪気に騒いだシーズン1のシャロ。「いつかあいつは人を殺す」とドノヴァンに予言されたように、ついに殺人を犯したシャロ。だがその顔に高揚はない。あるのは喪失の悲しみとしか思えない表情だ。ソシオパスが彼の選んだ仮面であったにせよ、なかったにせよ、そしてどんな理由があったにせよ、殺人を犯してしまえばもはや自分は、無垢の推理機械として犯罪と戯れることはできないと、自覚している表情に見える。
 悲しいことだが、あのとき21世紀のシャーロック・ホームズは一度死んだのだと思う。シーズン4の彼がそれまでの彼と似ていないのは、死後の営みだからだ。死んでしまった彼は、生前の行為をなぞってみせることしかできない。死んでいたのはメアリではなく、あのドラマの世界だった。

Sherlock回顧 3/メアリは守られたかったのか?

 もうちょっとでいましている仕事にけりがつくので、そうしたらせめてS3は見直してみようと思っているのだが、頭に湧いてきてしまったことなので吐き出しておく。制作者が「女性キャラ重視」を意識しているわりに、女性が見て納得できるような描き方にはなっていない、というのは、いろんな人がいっていることだけれど、そのラインで自分もひとつ考えた。

 シャロは「メアリは僕が守る」と繰り返した。しかしメアリはシャロを庇って撃たれてしまい、ジョンは「守るっていったくせに」と全力でシャロを責める。シャロは「僕が彼の妻を殺した」とまでいう。スミスに聞かせるセリフだとしても、本音ゼロとはいえないよね。で、我々は「いやジョン、それは逆恨みだから」と悲鳴を上げたんだけど、ここで視点を変えてみよう。メアリは守られたかったのか?
 騎士となって女を守るのは男のロマンかもしれない。しかもそれが恋人じゃない、親友の妻であるということは、騎士にはスケベ心ゼロです。究極のプラトニックラブで、昔の騎士道精神の香りすらする。ああかっこいいぞシャロと、男性である制作者は思ったんじゃないかな。でも、ここでメアリの立場になってみよう。
 そういう男を手玉にとって、利用するのは賢い悪女です。アイリーンはそのタイプ。でも彼女は自分がしているのはひでえことだとよくわかって、それをゲームの武器にしている。現実にいたら困るけど、ドラマのキャラとしてはとてもかっこいい。無自覚な悪女もいますよ。だけど、メアリはそういうタイプともまた違うよね。男三人とチームを組んでフリーランスのエージェントをやっていられたんだから、男に頼るより自分で自分の始末はつける、そこにプライドを持つタイプだと思う。
 過去を清算して堅気になっても、そういう性格は変えられない。ジョンのような一見強面でないタイプを選んだところからも、彼女は夫婦関係でもある程度主権を握りたいタイプだと思う。だからこそ、名探偵が目の前にいたのに彼には頼らず、ひとりでマグヌッセンを殺しに来たんだし、シャーロックに向かっても発砲しちゃえたんだと思う。彼女はシャーロックに守ってもらいたいとは思わなかったはずだと。ちなみに篠田は「殺す気で撃った」派です。
 でも、殺し損ねた。「腕がなまったわ」と舌打ちしたでしょう。「ジョンにいわないで」と病院にいいにいったときは、殺せる状況なら殺していたかもしれない。メアリのキャラの一貫性を考慮すると、どうしてもそういうことになるのですよ。ところがそれもできないまま、ジョンに暴露されて告白させられた。屈辱だよね。こういう人間が「君は僕が守るよ」といわれて嬉しいか。屈辱の上塗りだと思うんだよね。それを晴らすには、自分の手で決着をつけるしかないでしょう。彼女にはマグヌッセンを殺す切実な動機がある。

 ドラマを書き換えるなら、シャロ・ジョンがマグヌッセンとの交渉に臨む席に、メアリが侵入してマグヌッセンを射殺する。メアリはすでに死ぬ覚悟をしていた。マイクロフトのヘリが迫る。そのとき彼女をかばって立ちふさがるシャロ・ジョン。そうしてメアリは逮捕される。「待っているよ」というジョンに微笑みながらかぶりを振るメアリ。そして数ヶ月後、221bに赤ちゃんがやってくる。マイクロフトが困惑しながら抱えてくる、なんてのでもいいな。メアリは姿を消した。
 あー、S4がまるまるすっとんじゃいました・笑
 でもメアリの悪評って、彼女のキャラの描き方が破綻しているところから来たような気がするのですね。男に頼らない、きっぱりすっぱりしたタイプのようなのに、シャロの決死の好意によっかかって平気(少なくともそれを気にしているような場面は描かれていない)だから、ものすごい打算的で図々しい女に見えてしまう。そういうことだと思いました。

2017.08.14

 天気予報では今日は日が出て30度超すという話だったのに、雨の音で目が覚めた。昼間も雨は止んだけど、ずーっと暗いまま。夏の気温と日光が足りないと、農作物とか秋になっていろいろ悪影響が出るんじゃないかいと気がもめる。

読了本『エンデュアランス号大漂流』 エリザベス・コーディ・キメル あすなろ書房 友人K教授にお勧め&拝借したもの。1915年の南極探検記。しかしこの時代、船は基本帆船です。船に積める無線もありません。いまの科学技術に慣れた身としては、それを聞いただけで「無理、絶対無理」とわめきたくなるようなものだけど、ノルウェーのアムンゼンが南極点に初到達し、イギリスのスコットが遭難死亡したのも1911年だものね。ううう、想像しただけで寒くて冷たくてご勘弁な気分になります。
 しかもこの探検、失敗しています。帆船は流氷域に入ったところで氷に捕まって動けなくなり、27人の隊員はついに船を捨ててボートで脱出、エレファント島にたどりつくと、今度は救難を求めて3人がボートで再度出発。捕鯨基地のあるサウスジョージア島へ助けを求めに行くが、島に着いたからって終わりじゃない。そこは町のあるのとは反対側だっていうんで、雪山を地図もないまま越えて行かなくちゃならない。あああ、読んでるだけで怖い。
 たぶん南極大陸にも到達できないまま失敗に終わったので、日本での知名度は無きに等しいのだが、隊長はアーネスト・シャクルトンという不屈の冒険家で、ひとりの死者も出さずに帰国した。この人、極地探検以外はほとんど能なしだったというし、生きて帰った隊員たちも第一次大戦で続々戦死したり、なんかこう、定型のドラマに収まる話ではないのだが、そこが別の意味でリアルだなって思いました。

『僕らを育てたシナリオとミステリーのすごい人 辻真先インタビュー』4 同人本ですが、生きたレジェンド辻真先の仕事の軌跡をたどる最高の本。今回は初期アニメのお話。仕事のボリュームもすごいけど、記憶力もすごいわ、先生。毎度「うわあ」「う、わ、ああ〜」となりながら拝読しております。

2017.08.13

 エアコン無しで眠れて朝もそれで済んだのはよかったけど、湿度は高い。散歩していると汗がじっとり。空には低い黒雲が来ているが、たぶん雨は降らないだろう。世間様はお盆休みなのだな。医者も調べたら今週いっぱい夏休みだった。

 相変わらず暇暇にシャーロックのことを考えていて、S4がいろいろ納得できないのはやはりS3からおかしくなったその結果なのだよなあ、だからそっちを分析しないとなあと思っていたら、読ませてもらっている某ブログの方がその通りのことをやっておられて、ちょっと我が意を得たり感なのだった。
 困るのは(って、別に困るわけでもないけど)、S3が始まったときはそれなりに面白くて、メアリの登場やドタバタの帰還劇も、結婚式も楽しんで見てしまったこと。ただ、正直をいえば違和感のようなものはあったんだ。E1の、おちゃらけたシャロ登場は「やりすぎ」じゃないかい、とか。ジョンに赦すといってもらうために、爆弾の件であんな嘘をつくのは、こりゃもうきっぱり「やりすぎ」だろう、とか。肝心のモランがらみの事件は、妙にあっさりしてちゃちかったねえ、とか。結婚式のシャロの奮闘は可愛かったし、スピーチは感動ものだったけど、あの回はいろいろ詰め込みすぎでわかりにくくなかったかい、とか。詰め込みすぎてわかりにくくて、話の本筋がどこかに行ってしまいかける、というのは、S4でも継続している欠点だと思うんだけど、なんでそんなことになってしまったのかな。
 その原因はひとつには、やはりネットの視聴者の反応を見て、その裏を掻こうという努力をしすぎた結果、バタバタになってしまったんじゃないのかい、という、それは邪推かもしれないが、どうもそう思える。S1のクリフハンガーだって、どう続けるか考えてませんでしたって当人たちがいっているんだから(人気が出なけりゃ打ち切られたはずだもの)、深謀遠慮や長期構想なんてあったはずがない。S2のトリックもそんなに緻密には考えず、アンダーソンに話したくらいのことを考えていたら、そんなのネットではいくらでも指摘される大したことのない解決策で、こりゃまずいやとなったんで、ああいうメタな、正解は曖昧な描き方しかできなかったんだと思う。アンフェアだなあとは思ったけどね、あのへんまではどうにか目をつぶれると思った。でも、後になるほどクリフハンガーの回収法が劣化しているというのが辛いやね。
 S3E3は、ひたすら意表を突くことだけに憂き身をやつした。マグヌッセンのオフィスに侵入していたのはなんとメアリ。さあどうだ。メアリの正体は元フリーのエージェント。驚いたか。しかもメアリはシャーロックに発砲。意外だろう。さらにシャーロックはメアリを庇う。どうだあっ。はい、そのたびに驚きましたよ。でもね、その意外な展開がドラマとしてちゃんと収束してないじゃん。個々のシーンはすごいよ。メアリに撃たれたシャーロックがマイパレの底でモリアーティと再会して、そこから這い上がってくるところなんかシリーズ屈指の名場面だと思う。だけどその結末が、シャーロックによるマグヌッセン射殺って、納得が行かなすぎるよ。
 この物語がジョンの犯人射殺で幕を開けたこともあって、「悪人は殺されても仕方ない」ぽさというのは、シリーズの中に潜在していた気はするけど、ここまでで主人公サイドから殺された犯人は他にいないし、たったいままでマグヌッセンにいたぶられていたジョンさえそれを肯定しなかった。そういう描き方をしているというのが、また腑に落ちない。はっきりいって、メアリはここで我が手でマグヌッセンを射殺して、逮捕されるべきではなかっただろうか。

 ディスク見直す余裕がないけど、考え出してしまったから、もう少しこの話題引きずるかも。

2017.08.12

 少し気温が上がってきたが、まだ曇りの要素の方が強い。しかし、ジムの中はエアコンががんがん効いているのに、なんだって運動すると全身汗まみれになるのだろうか。少なくとも、汗腺の働きだけは人一倍いいらしい。水分補給さえ怠らなければ、暑い時は汗が出た方がいいよね。

 『月影の迷路』と似ていると聞いたので、『まぼろしの白馬』を本棚から取り出して再読。なるほど、物語の基本構造は似ているというより、ほぼ一緒。血縁の一族にまつわる悪縁を、なにもしらぬまま祖先の故地にやってきた少女が浄めて、秩序を回復させる。
 しかし『まぼろし』は18世紀か19世紀初めの話で『月影』は現代の話、ヒロインも前者は13歳の少女で後者は恋愛中の18歳。魔法もやすやすと信じられる13歳と違って、18歳はいきなり自分が待たれていたといわれても、気味悪がるばかり。『まぼろし』のヒロインがたちまちその土地を好きになっていくのと比べて、現代人は腹を立てたりつっかかったり、まことにとげとげしい。
 リアルな反応として考えれば後者が納得の行くところで、前者の物語は子供時代に読んだ時から「なにもかもうまく運びすぎだなあ」という気がしたものだが、『月影』でも結局話は直線的に、ヒロインが自分の義務を受け入れてその役割を果たすことになる。だから、美しい夢物語めいた『まぼろし』と比べると、こちらはなんとも強引な印象がつきまとう。世界と物語がうまくマッチしていないので、クライマックスは(悪い意味での)アニメにしか見えない。

2017.08.11

 冷蔵庫が来た途端に涼しい。つーか、むしろ寒い。しとしと雨は梅雨のよう。

 冷蔵庫が新調されたのだから、二度と正体不明のパックを前に「これはなんだったっけ」などと首をひねらずに済むようにしよう、と固く決意して、我が家の夏の定番料理のひとつ、ニンニクのビシソワーズを作って余った卵の白身一個分をパックに入れ「卵の白身 17.8/11」とメモをつけてフリーザーにしまう。シフォンケーキをつくるときに全卵にプラスすると、ふわふわになりやすくていいんだよ。でもまあ、忘れる前に使う方がいい。
 冷蔵庫なし生活では、全然料理をする気にならなかった。んだもんで、生ゴミ容器がとても怖いことになっていたのだが、キモチワルイので説明はしません。ううう、忘れよう。

読了本『ダンジョン飯』5 九井諒子 エンターブレイン 地下迷宮の中で妖物を退治するだけでなく料理して食べながらの探検という、新鮮な視点とほのぼのでヒットした作品だが、ここへ来てだいぶニュアンスが変わってきた。この迷宮を作り出したらしい「狂乱の魔道師」が姿を現して、主人公グループに危機が迫り、他の冒険者たちも腹に一物の様子で集まってきて、ほのぼのとはいえなくなってきてしまった。人間にエルフにドワーフに、といろんな種族が入り交じる、ゲーム由来の世界観というのは、どうも自分にはそれほど魅力的に感じられないので、せっかくのユニークな物語基調は堅持してもらいたいんだけどなあ。

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