篠田真由美お仕事日誌

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Sherlock回顧 1/忌まわしき花嫁への疑問点

 取り敢えず、自分的には70パーセントくらい否定的なS4が終わって、「つまりどこが自分的にはそんなに気に入らないんだろう」などとつらつら考えるが、結論を出すのはディスクを買って見直さないとな、と思う。S1の頭から、いろいろいってみたいこともあるのだが、それにはやはり見直さないとと思う。3まではボックスで持っているんだけど、いま仕事に入ってしまったので、その余裕がないのだよ。脳のキャパが昔より格段に減少している感じがあってさ。
 だもんで、取り敢えず見直したくてもディスクまだ買ってない、でも劇場で4回見たぜな「忌嫁」についての、引っかかりをまず書くことにする。これは、順不同に思いついたことを、取り敢えず4までのシリーズを含めた中であれこれ考える、というページにします。

 ヴィクトリア朝舞台にベンとマーティンがホームズとワトソンをやる、という企画自体かなり好き。ふたりの扮装もとても決まっていたし、でぶったマイクロフトのお遊びも不穏な感じが面白かったし、ハドソンさん、メアリ、ワトソン家のメイドといった女性陣の反撃的せりふも、お遊びの一部だなと思って楽しく見た。「シャーロック」自体がドイル正典の二次創作だけど、この特別編はそれのさらにパスティーシュみたいなものだと思ったから。
 犯人が怒れる女たちの同盟だった、という趣向を、それほど真面目に受け取る必要は無いと思うのだよね。女性に対するリスペクトというには、いかにもお粗末さんであったけれど、別にエンタメのドラマで正しいフェミニズムを勉強する必要も無いんじゃない? いやもちろん、篠田は男根主義には断固として反対しますよ。性分業的結婚観なんて、でえっきれえでありますよ。でも、シャロとジョンのブロマンスも大好きだもん。それとこれとは別腹よ。だから変にフェミニズムに目配せするようなのは、かえって失礼だとは思うけど、いちいち咎め立てるのもおとなげないな、と思います。ここで「疑問点」というのは全然別のこと。

 死んだはずのモリアーティからのネット映像という謎を、シャーロックがマインド・パレスの中で、過去にあった未解決事件を参照して解明しようとする、という趣向はすごく面白いと思う。面白すぎて、これをそっくり外郭に使用した本格ミステリを誰か書かないかななんて思ってしまったほど。そういう趣向を思いついた、という一点において、拍手します。シャーロックのいる現代にドイルのホームズ物語はなかったんじゃないの? なんて、突っ込めば突っ込めるけど、そこは喜んで目をつぶっちゃう。自分にとって、問題はその先だ。
 ジム・モリアーティはシャーロックの目の前で、ピストルを口の中で発射して自殺した。シャーロックは19世紀に起きた、衆人環視の中で口の中にピストルを発射して死んだのに、生き返って夫を殺したリコレッティの妻の事件を思い出し、この事件を解くことでモリアーティの死の真相に迫ろうとした。でも、このふたつの事件って、口の中にピストル入れて自殺、という点しか同じじゃないよね。リコレッティの妻については、現場に彼女の味方の女性たちがいて、死体をすり替える余地があった。モリアーティの自殺現場には、チーム・ラザロ他シャーロックの味方が複数いたはずで、彼が飛び降りた後でモリアーティの死体がどう処理されたのか、問題はまずそこではないですか。死体が消えたとか、動かされたとかはあったのか。その点で疑問を抱く余地はあったのか。しかも自殺の瞬間の目撃者はシャーロック自身だ。自殺が狂言なら誰より彼が気がつくはずでは。
 本気でモリアーティ生存説をなりたたせるなら、替え玉説以外あり得ないことは、最初から明白だと思うんだよね。なにもわざわざえんやらや、とヴィクトリア朝に戻らなくても。だから、モリアーティ事件の解明のためのヴィクトリア朝ダイブだったなら、事件はもう少し似た構造のものである必要があったんではないのかな。あれだけいろいろやっておいて、「リコレッティ事件は多数共犯者の援護によるもの+時間差自殺でした。モリアーティの場合はそれはあり得ないから、やつはやっぱり死んでるよね。たぶん彼が生前にしかけた罠と、残党が動き出したんだよね。じゃあ、取り敢えずは相手の出方待ちだ。ハイホー」って、かなり肩すかしじゃありませんか。自分的にはそうでした。

 それから、いま思ったんだけど、これまでの女性キャラのほとんどが、怒れる女たち同盟のメンバーになっているのに、メアリだけは継子扱い。しかもマイクロフトのエージェント。そして女性たちが正体を現した場面ではフェイドアウトしてる。というのは、つまりこれはシャーロックの認識なわけだから、彼はメアリをマイクロフトの部下だと考えていて、他の女性たちとは別に考えている、ということだと思う。
 S4のシャーロックが、メアリをジョンより有能だといって捜査に加えたりするのを、「なんでシャロはそんなにメアリが好きなんだ」と違和感を感ずる意見があるようだが、自分はやはりシャーロックのメアリへの好意は、すべてジョンゆえのものだと思ってます。ジョンにとってはもはや嬉しくないけど、そのへんがシャロにはわからない。有能なスパイとしてのメアリの能力は評価していても、彼女に友情を抱いているわけではない。権威的な兄貴のエージェントを好きにはなれないわな。でも、ジョンが選んだ人だもの。

 つまりS3E3でメアリの過去を知ったジョンの中から、メアリに対する愛はかなり水位を下げている、というのが自分の読みです。そのへんはいずれS3E3について書く時にまた触れますが、いくらジョンがアドレナリン・ジャンキーだからって、嫁が元暗殺者で嬉しいか。嬉しくないよ。メアリが悪人とはいえないというのは、ゴルゴ13が悪役じゃないというくらいの意味で、認めますが。
 しかしシャロはそれを認識しない。自分が撃たれたこともちゃんと弁護したし、ジョンは彼女を赦したんだし、あの結婚式の日からなにも変わっていないと、シャロだけが信じている。あ、なんか自分で書いてても、彼が可哀想になってきた。まあとにかく、そう考えればS4の展開には納得が行くと思う。いや、ただの深読みですけどね。
 

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