サイン本を作っています。これは為書き無しなので、名前を書いて印を押すだけですから、わりと簡単といっても昼飯前に30冊は終わりませんでした。まあ、今日中には終わるでしょう。
で、そのサイン本関連なのですが、物書きの業界や出版社や書店にいる人は当然知っていること、常識に属することなのに、お客様である読者は知らないことって案外あるのかな、と思ったのは、ついったでおしゃべりさせていただいている方が、「物書きの印税は基本10%」というのをご存じなかった、そのびっくりからでした。
大ざっぱに言うと、千円の本が1冊売れれば作者に100円入る。より正確に言うなら、源泉税が差し引かれて90円が入ります。さらに消費税のこともありますが、話の趣旨からはずれるので、とりあえずそこは省略します。ただ印税というのは刷り部数の計算になりますから、1冊千円で初版が千部だったら1000×1000×0.1で10万円が作者に支払われます。千部刷って百部しか売れなくても10万円支払われますが、次からは千部は刷ってもらえなくなります。それから、電子書籍は売れた数ベースなので、百部しか売れなければ1万円にしかなりません。印税は10%がほとんどですが、まれにこれより多いことがあり、決してまれではなく10%より少ない場合があります。
それから、書店の収入は20%がほとんどです。千円の本は800円で仕入れるので、1冊売れれば200円の売り上げです。万引きが書店を潰すのは簡単というのも、これでおわかりでしょう。千円の本を1冊盗まれれば、その損を取り戻すには同じ本が5冊売れなければなりません。非常に小さな額の儲けで書店は営まれているわけです。
そしてサイン本。流通している本のほとんどは、納品されても売れなければ返品が可能ですが、汚損されれば返品出来ません。そしてサイン本は、それを求めてくれるお客様にはお宝でしょうが、売れ残れば汚損本として返品が不可能です。つまりサイン本は、書店さんの買い切りということです。30冊サイン本を注文してくださるということは、30冊は売れるだろうという見込みの上の注文なので、売れなければお店の損になってしまいます。なので「有り難うございます!」ということです。
なにか、お金の話というのはしづらいというか、するものではないというような風潮が、いまでもなおあるような気がするのですが、物書きである自分にとって「書くこと」は労働であり、その対価として収入を得ることは、なんら恥じらうようなことではないと思います。違います?